じゅうぶんだよ

30歳になる従姉の話。おフランスに留学中、親から一度に50万だとかいう仕送りをしてもらって、自分の給料で服を買っていたらしい。「それはおかしいでしょ?」と、母。「一度東京に戻ってきたらしいんだけど。それで親に対する感謝とか、何かしてあげたりとか、そういうのもないんだって」「ふーん」
「あんたはそういうの、ないよね。物欲そんなないし。うちは大丈夫だって言っといたよ。服とかブランドものとかに興味ないもんね」「…たしかにそういうのには興味ないけど、好きなもんにはいっぱいお金使ってるよ…シュミの関係とか、私も自分のことばっかりお金使ってる」「そう?でもお母さん、いろいろしてもらってるしね。色々こまかいもの買ってもらってるし」「!?(何も買ってあげた記憶などない)えっ、私、何か買ってあげた?」「いや、お金とかじゃなくて。いろいろしてもらってる、じゅうぶんだよ」
涙が出そうになった。

私は母に何もしていない。月2万ほど食費として家に入れてるだけで、あとは会社から帰ってきたらあたたかいごはんができてる、そういう生活を送らせてもらってる。クリスマスにも母の日にも誕生日にも、特に何も買ってあげるということもない。家のことを率先してやるでもない。それでも、母はじゅうぶんだという。どうして?
自分の部屋にもどって一人になり、現状に甘えるばかりで何も孝行らしきものをしていない自分が情けなくなって、ちょっと泣いた。