捨てられない

モノを捨てるのが怖いのは、それと一緒に過去を捨てることが怖いからだ。べつに過去にしがみついているわけではないけれど、それを捨ててしまうのは、今までの自分の人生を失ってしまうことのようで怖い。時とともに不鮮明になる記憶、もう既に思い出せなくなっているものも数多いし、どんどん薄れていってしまうのが怖い。人はなぜ過去のできごとを忘れてしまうのだろう。私の頭の中で、「忘れたい記憶」と「忘れたくない記憶」の振り分け作業をしているのは、いったい誰なのだろう。
どんどんモノを捨ててしまえる友人がうらやましいと思う。捨てられないから、どんどん溜まっていく。捨てる前は何も思っていないものでも、捨てたあとで捨てたモノの記憶がよみがえってきて後悔する経験を何度かしているから、余計に捨てられない。小学校一年からの教科書。絵本。児童書。学習素材の付録の冊子。らくがき帳。あのね帳。日記帳。年賀状。引き出し一杯の手紙。学祭のパンフレット。捨てた後でかならず読みたくなる漫画雑誌。映画雑誌も当時チェックしてた以外の俳優が気になったりするから捨てられない。アニメ誌。読者投稿メインのイラスト雑誌。古紙回収に出せないような如何わしい雑誌。文庫本。コミックス。買い集めた同人誌。自分でつくった同人誌。原稿。イラスト。人に描いてもらった絵。スケッチブック。
……捨てたほうがいいような気もしてきた。捨てたらスッキリするだろうか。